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Captain 42 |
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文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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皆さんの脳は実年齢より若いですか、それとも老けていますか?
最近、脳を若返らせるトレーニングが話題となっていますが、2つ以上のことを同時に行うことで、脳に刺激が与えられ、活性化するといわれています。私の場合、コックピット内で複数のことを常に同時に行っているので、いくらかは脳に良い効果があるのでは、と勝手に思っています……?!
乗り物を操縦するという点で、皆さんに最も身近なのは自動車でしょうか。手でハンドルを操作し、足でアクセルやブレーキ、目でスピードメーターの確認など、複数の作業を同時に行います。しかし、ご想像される通り、旅客機の操縦は自動車以上に複雑です。コックピット内にはたくさんの計器がありますし、操縦桿を握りながら、管制官と交信し、また、目でさまざまなデータの入力・確認なども行っています。さらに、客室乗務員と連絡を取りながら、客室内の状況を把握する一方、急病人、あるいは機器の故障など、万一に備えています。
旅客機を左右に動かす操作をとっても、単純に操縦桿を回せば良いというわけではありません。具体的にいうと、まず旅客機が誘導路を地上走行する際、機体を左右に動かす操作は、ティラーと呼ばれるレバーで行っています。このレバーは旅客機のノーズギア(前輪)を動かすもので、ブレーキは足のペダルで操作します。
次に、滑走路上で離陸に向け、速度を上げている時。この場合はスピードがとても速いため、機体が真っ直ぐになるよう、左右への微妙な方向調整は、足のペダルで操作します。左あるいは右に踏み込むと、ノーズギアと垂直尾翼が動き、機体を制御できます。この時の手は、機体が横風で傾かないように操縦桿を抑えるのと、エンジンの出力を調整するスロットルを握っています。
そして、離陸してからは、左右へ旋回する操作や上下へ高度を変える操作は操縦桿で行います。
このように機体を左右に動かす操作だけをとっても、状況に応じて手と足を使い分けています。
旅客機の複雑な操作を効率よく、しかも的確に行うためには、日頃の訓練や技術の習得はもちろんのこと、常に起こりうる状況を予期し、迅速に対応できるよう余裕をもっておくこと、そして、重要度に応じて優先順位をつけ、確実に行うことが大切です。
皆さんも2つ以上の作業で、脳を活性化させてみてください。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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