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コックピット日記
Captain 41
文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
旅客機の教習所
 皆さんは「下地島(しもじしま)空港」というのをご存じですか。下地島は、沖縄県にある島の一つで、宮古島の西に浮かんでいますが、この名称を聞いてすぐにピンと来る方は、かなりの通だと思います。
 一般的に「空港」と呼ぶ場合、羽田空港や伊丹空港など、定期便が運航されているものを指します。しかし、この下地島空港には定期便が一機も飛んでいません。にもかかわらず、3,000メートルの立派な滑走路があるちょっと特殊な空港です。
 実は、この空港は日本で唯一、パイロットが大型旅客機で訓練を行うために設けられた空港で、いわば旅客機の教習所のようなところです。日本航空では主に、ボーイング737-800 、ボーイング767の訓練を行っており、私も担当機種がMD11からボーイング767へ移行した際、慣熟訓練を下地島空港で受けました。
 下地島は、滑走路だけでなく周辺空域もパイロットの訓練用に確保されており、さまざまな状況を想定した訓練を行っています。例えば、いったんスピードを落として失速させ、そこからエンジンのパワーを最大にしてスピードを上げ、旅客機を立て直す訓練、通常の運航では25度の角度で旋回するところを、45度の急角度で旋回する訓練などがあります。
 また、滑走路を使った「タッチ・アンド・ゴー」(離着陸訓練)も行われます。これは旅客機が完全に着陸(タッチ)した後に、ブレーキを使わず、再びエンジンのパワーを上げて、そのまま離陸(ゴー)するもので、これを繰り返すことによりたくさんの離着陸の経験を積むことができます。
 機種移行のような慣熟訓練の場合は1週間程度、最初から操縦訓練を行う場合は1ヵ月程度、島内にある宿舎で、訓練生(パイロット)と教官とが一緒に生活をしながら、訓練を行います。コックピット内では緊張感と集中力を必要とされますが、その一方で、休日には魚釣りやダイビングをしたり、地酒(泡盛)を飲んだりといった楽しみもあります。
 ちなみに下地島空港では、多いときなら3機の旅客機が次々とタッチ・アンド・ゴーを行います。空港周辺には、大きな旅客機が繰り広げる訓練模様を眺めたり、撮影したりする人も結構いますし、なかには訓練視察を目的として旅行される方もいるようです。
 皆さんも下地島を訪れる機会がありましたら、普段見ることのできない私たちの訓練風景をぜひご覧ください。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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