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コックピット日記
Captain 37
文=高桑久仁昭(日本航空機長)
Text by Kuniaki Takakuwa
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
旅客機の燃料タンク
 皆さんは旅客機の燃料について、どのくらいご存じでしょうか。「旅客機の燃料って何? 燃費はどのくらいなの?」。時々、このような質問をいただくことがあります。
 自動車やバイクの場合、ガソリンや軽油で走ることをご存じでしょうし、自分の車の燃費や燃料タンクの容量も、当然知っているでしょう。また、電車は電気で動くことも、タクシーの多くはプロパンガスで走ることも、ご存じだと思います。
 では、ジェット旅客機の燃料は何でしょうか? 答えはずばり「灯油」。皆さんが暖房などに使っている、あの灯油です。ただし、ジェット旅客機が飛ぶ高度1万メートル以上では気温がマイナス50℃(時にはマイナス70℃以下)にもなり、厳しい低温下でも凍らない、純度が高く、水分の少ない「ケロシン」と呼ばれる灯油が使われています。
 また、機体の重量が重く、長距離を飛行するジェット旅客機は、燃料タンクも巨大です。日本 ― ロンドン線などに使用されているボーイング777-300の場合、最大で積める燃料は約17万リットル(大きなドラム缶で約850本分)、燃料の重さだけで約137トンにもなります。こんなに大量で重い燃料をどこに積むのかというと、意外かもしれませんが、左右に大きく延びる平べったい主翼の内部が燃料タンクとなっています。
 ちなみに、同機の最大航続距離は約1万1000キロですので、計算上の燃費は1リットル当たり、約65メートルになります。
 とはいうものの、実際の運航では、燃料を満タンにして飛ぶことはほとんどありません。旅客機には離陸するための最大重量が決められていて、搭乗されるお客様と乗務員、貨物、燃料などの総重量に制限があります。また、荷物をたくさん積んだ自動車と同じように、旅客機も重くなるほど燃費が悪くなり、燃料をたくさん消費してしまいます。そのため、私たちは飛行計画と旅客機全体の総重量を十分に検討して、燃料を必要以上に多く積んで、浪費しないように心掛けています。自動車の給油をするときのように、「とりあえず、満タンで!」とは、簡単にいきません。
 ボーイング777は、ボーイング747-400などのジャンボジェット機に比べて、燃費が格段に優れているといわれますが、私たちパイロットは、限りある石油資源のため、さらには地球環境のために、日々、努力しています。

*ボーイング747-400の最大搭載燃料は約21万7,000リットル(大きなドラム缶で約1,000本分)、最大飛行距離は約1万3,500キロ。実際の運航では、同じ距離を飛ぶ場合、ボーイング777はボーイング747-400に比べて燃料消費が2/3といわれています。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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