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Captain 36 |
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文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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日本各所で春の兆しが見え始めるこの時期、桜前線の話題が聞こえてくると、それだけで何だかうれしい気分になるものです。そんな日本を飛び立ち、ヨーロッパへ向けてシベリア上空を飛行すると、こちらはいまだに見渡す限り白い大地が広がり、春はまだ遠いなぁと感じてしまいます。
地球上にある森林の約2割を占めるというシベリアタイガですが、コックピットから眺めていると、ここ数年、雪に覆われている期間がどんどん短くなっているように感じられます。原因は地球温暖化ともいわれていますが、実は、シベリアで起こる森林火災が二酸化炭素の吸収源であるはずの森を減らし、温暖化に拍車をかけているという報告もあります。
日本航空では、さまざまな形で地球温暖化の問題に取り組んでおり、私たちパイロットも二酸化炭素の排出削減に努力していますが、あまり知られていない役割として、上空からシベリアの森林火災を発見し、それを報告して被害拡大を防ぎ、二酸化炭素の排出を抑えるというのがあります。いわば空の「火の見やぐら」です。
この研究で国際的なプロジェクトの指揮を執っているアラスカ大学・福田正己教授によると、シベリアでは火災によって毎年、北海道と同じ面積を超える森林が消失し、それによる二酸化炭素の放出量は、シベリアタイガ全体の吸収量を大きく上回っているそうです。
現在、研究機関では人工衛星を使って、宇宙からシベリアの森林火災を観測し、気象データなどから延焼を予測して、消火作業に役立てる研究を進めています。しかし、雲が多い場合などは人工衛星での発見が困難ですし、衛星からの情報解析が正しく反映できるように、早期発見システムを構築し、精度を上げていく必要もあります。そこで、私たちパイロットが森林火災の発見とシステム開発に協力しているというわけです。
実際、昨年夏に、私自身シベリア上空で森林火災を発見し、3回通報しました。大規模なものになると広範囲に煙霧が立ち込め、また、それが上昇気流に乗り、積乱雲にまで発達するものもあります。
2007年夏季までの実績では、シベリアで確認された森林火災は約1000件、そのうち約500件がパイロットの通報によるものです。
地球温暖化を防ぐために、そして我々の将来のために、私たちパイロットも努力しています。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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