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Captain 35 |
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文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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毎日、たくさんの旅客機が離発着する羽田空港。空港内には、皆さんがご利用になるターミナルビルをはじめ、管制塔、旅客機の整備場、航空会社のオフィスなど、さまざまな施設が集まっています。
いずれの施設も旅客機の運航に欠かせないものですが、中でも私たちパイロットにとって重要なのが「シミュレーター」と呼ばれる飛行訓練装置です。これは操縦桿や計器類など、実際のコックピットとまったく同じ環境で、模擬画面を見ながら操縦技術を習得するための装置で、平行滑走路に挟まれた敷地に建つオフィスビル内にあります。
ビルの中に入って奥へと進んでいくと、広々とした吹き抜けの空間があり、コンピューターによって機体(訓練装置)が動く、大きなシミュレーターが機種ごとに何台も並んでいます。内部に入ると、窓の外に広がる光景がコンピューターで作られた画像ではあるものの、CRT画面や計器類の動き、スイッチの位置、操縦桿を動かしたときの感覚などは、実際の運航時とほぼ同じです。私が乗務しているボーイング767の場合、3台のシミュレーターがあり、およそ650人のパイロットが順番で訓練を受けています。
いつも旅客機を操縦しているのに、なぜシミュレーターでわざわざ訓練しなくてはいけないのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。その答えは、毎日の安全運航のための備えです。シミュレーターには国内・海外にある各空港や何種類もの天候のデータが入っていて、例えば羽田空港への夜間着陸や悪天候で滑走路が見えづらい状況で那覇空港に着陸するなど、さまざまな状況下での訓練をすることができます。また、緊急離陸停止、エンジントラブルが起きての緊急着陸、機内で火災が発生した場合など、万が一のことを想定した操縦技術も訓練しています。
これらの訓練を実際の旅客機で行おうとすると、場所や時間、それに莫大な費用とリスクが伴います。そこで活躍するのがシミュレーターであり、万が一のトラブルに備えて、私たちパイロットは年間、3〜4回の訓練と1回の審査を受けなくてはならない決まりになっています。
パイロットは、安全運航のためにさまざまな技術を身につけておかなくてはいけません。シミュレーターは、私たちから切り離せない大切なものなのです。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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