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コックピット日記
Captain 32
文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
空から眺める名山
 「この前、羽田空港から富山空港に行く便に乗ったけど、富士山や八ヶ岳がきれいに見えて、すごく良かったよ」
 時々、お客様からこのような声を聞くことがあります。
 私が操縦するボーイング767は、羽田空港と北陸地方にある小松空港(石川県)や富山空港を結ぶフライトを担当していますが、お客様が感動されたように、この路線は山々の景色がとても素晴らしく、窓からの眺めをおすすめしたい便の一つです。
 少し解説すると、羽田空港を飛び立った旅客機は雄大な富士山の北方を通り、左手に南アルプスの山々、右手に八ヶ岳(やつがたけ)の雄姿を望みながら北西に進んでいきます。そして、御嶽(おんたけ)山、乗鞍岳、北アルプスの峰々、白山(はくさん)などの名山が続き、やがて日本海へ出ます。晴れた日の朝や夕方なら、太陽の光が斜めから差し込み、山々が浮かび上がるように見えるので、登山がお好きな方はもちろんのこと、そうでない方でも、これらの景色に出合われたら、きっと見とれてしまうことと思います。
 また、このルートの景色をおすすめする理由として、飛行時間が短いことも重要です。羽田―小松、羽田―富山のいずれも約1時間のフライトで、飛行距離が長くありせん。そのため、飛行高度を高くする必要がなく、結果としてルート付近にある名山をより近くで眺めることができるのです。
 同じ景色でも、眺める高度によって印象が全然違います。この二つのルートの場合、条件が良ければ、山肌を覆う樹木までくっきりと見えますし、登山者の姿が見えるかもと思えるほど、本当にすぐ近くに感じられます。
 この他にも、着陸に向けて高度を下げているときに名山の近くを通り、景色が素晴らしい空港があります。一つは女満別(めまんべつ)空港(北海道)で、本州から向かうと、左手に雌阿寒(めあかん)岳、雄阿寒(おあかん)岳がそそり立ち、右手には屈斜路(くっしゃろ)湖、摩周(ましゅう)湖が横たわる絶景が望めます。もう一つは熊本空港で、本州から向かうと、九重(くじゅう)連山の上を飛び、直前には阿蘇の外輪山のすぐ近くを通って着陸します。
 旅客機の中では、読書をされたり、お休みになるという方も多いでしょうが、天気の良い日に、これらのルートを飛ぶ便に搭乗された際には、少し気分を変えて、窓の下に広がる名山を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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