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コックピット日記
Captain 29
文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
ひと味違った花火
 いよいよ夏本番。この時期は、全国各地で夏祭りが催され、例えば青森のねぶたまつり、秋田の竿燈まつり、仙台の七夕まつりといった有名な東北の三大祭りをはじめ、その土地ならではの特徴のある夏祭りをご覧になろうと、ご旅行を計画されている方も多いのではないでしょうか。
 夏祭りの思い出といえば、わたしも小さい頃にお小遣いを握りしめて、遅くまで夜店で買い食いするのがとても楽しみだったものです。また、大阪で育ちましたので、夜店のほかに、お宮に設けられた舞台で漫才なども行われ、友達と笑ったり騒いだりして過ごしたことも懐かしい思い出です。
 さて、旅客機を操縦していて、上空からそうした夏祭りの明かりを見分けるのは難しいことですが、夏になると、あちこちで打ち上げ花火を見かけることが多くなります。大規模なものから、小さなものまでさまざまですが、夜のフライトでは日本のどこかしらで打ち上げ花火を見かけますので、やはり夏の風物詩なんだなぁと実感させられます。
 皆さんが普段ご覧になる地上から見上げる花火は、大きな打ち上げの音とともに、夜空に閃光が美しく絵を描くのが醍醐味ですが、上空から眺める花火は少し趣が異なります。例えるなら、海辺で水面に浮かんでくるクラゲのような感じとでもいうのでしょうか。音もなく、光の固まりが浮かび上がってきて、四方八方に広がっていく様子が見えるだけです。しかも、暗い夜空にきらめくのではなく、絨毯のように広がっている街のイルミネーションを背景に、鮮やかな光がぱっと現れるのは、ひと味違った趣があるものです。
 ちなみに、この時期、旅客機からきれいに見える花火には、東京の隅田川で行われる花火大会や、東京ディズニーランド・ディズニーシーの花火、名古屋近くの長島温泉や伊勢志摩あたりで上がる花火、大阪の富田林市で行われる花火大会などがあります。また、皆さんも海辺や河川敷などで花火をされることがあると思いますが、離着陸時で飛行高度が低いときには、そのような市販の花火でも見えることがあります。忙しいコックピットの中でも、地上に花火を見つけたときは、なんだかほっとした気持ちになるものです。
 皆さんも夜のフライトにご搭乗される際は、ぜひ花火を探してみてください。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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