JAPAN AIRLINES

コックピット日記
Captain 23
文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
“ドアモード”って何!?
 “客室乗務員はドアモードをディスアームド・ポジションに変更してください”
 旅客機が空港へ着陸し、ボーディングブリッジへたどり着くと、機内には必ずこのようなアナウンスが流れます。それを聞いて、客室乗務員がドアに何か作業するのを見たことはありませんか。
「あれって、ドアにかかっている鍵を外しているんだろう」
 以前、知人からこのように尋ねられたことがあります。皆さんの中にも、そう思われている方がきっと多いのではないでしょうか。
 実はこの作業、鍵の開け閉めではなく、ドアに取り付けられた緊急脱出用の装置を解除するためのものです。離陸前、機内ビデオで、お客様が滑り台を使って旅客機から滑り降りる映像が流されますが、ドアの内部にはこの緊急脱出用の滑り台(スライド・アンド・ラフト)が収納されています。そして、ドアを開けると同時にガスが充填され、自動的に滑り台ができるように設計されています。
 しかし、緊急時ならともかく、通常の場合に滑り台は必要ありません。しかも、一気に高圧のガスが送り込まれ、およそ10秒で膨らむようになっているため、周囲にいる人はとても危険です。
 そこで、ドアを開ける前に、滑り台が出る「アームド・ポジション」から、脱出装置が解除された状態の「ディスアームド・ポジション」に変更しているのです。これはドア1枚ずつ、客室乗務員が手作業で行っています。
 なお、機種によっては、前者を「オートマチック・ポジション」、後者を「マニュアル・ポジション」と呼びます。ご理解いただけましたでしょうか。
 また、ドアといえば、「ボーディングブリッジに着くと、旅客機の外側にいる作業員がドアを開けてくれるけど、内側から開けることはできないの?」という質問も時々、聞かれます。
 もちろん、緊急時には自分たちでドアを開けなくてはならず、内側から開けることは可能です。ただし、ボーイング767では外側から開けてもらう場合、滑り台が出ない仕組みになっており、万が一にそなえ安全を考慮し、外側から開けてもらっているというわけです。
 この次、旅客機をご利用される際には、ぜひドアを観察してみてください。
images
日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載