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Captain 18 |
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文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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海外旅行というと、どの服を持っていこうか、これは必要かなぁなどと、あれこれ旅支度に苦労される方も多いことでしょう。
「パイロットだから、さぞかし荷造りは慣れているし、手早く済ませられるだろう」と思われるようですが、こればかりは人それぞれ。私の場合も、毎回悩みますし、特に久しぶりに行く空港や季節の異なる国に行く際には、準備に2時間近くかかることもあります。
空港の手荷物受取所で、運航乗務員が荷物をピックアップする様子をご覧になったことがあると思いますが、私たちの荷物は基本的に、コックピットに持ち込む「フライトバッグ」と、貨物室に預ける「スーツケース」の二つです。
「フライトバッグ」は、鍵の付いた箱形の頑丈な鞄で、操縦に必要なライセンスや運航に関する資料、空港の地図、路線図などが入っています。書類がぎっしり詰まっているので、結構な重さになります。仕事柄、「万一に備えて」というものがほとんどですが……。
一方、「スーツケース」のほうは、着替えや日用品など個人的な荷物が入っています。これは旅行される皆さんと同じです。ただし、滞在先での健康管理が、私たちにとっては特に重要なので、運航乗務員や客室乗務員ならではの特徴があるようです。
これまで私が見たり、聞いたりしたところで、「こんなのを持っていくんだ」と感じた物を挙げると、箸、みそ汁、入浴剤、自分専用の枕、青竹(足裏の健康法)、トランプ(修学旅行みたい!)、ミネラルウォーター(滞在中に必要な分全部……、これは重い!)、目覚まし時計を必ず2〜3個、鍋(!?)など、いろいろとあります。
そんな私も、かつて冬にアムステルダムへ行った際、凍った運河の上で、子供たちがスケートを楽しんでいるのを見かけました。学生時代からアイスホッケーをしている私は、面白そうだと思って、次の機会にわざわざ自分のスケート靴を持っていきましたが、残念ながらすでに運河の氷が溶けていて、重い荷物が無駄になってしまった経験があります。
旅行の荷物では、目的地に合わせて夏服や冬服の工面をしたり、クリーニングに出す際も、フライト・スケジュールなどのタイミングを考えなくてはなりません。そんなわけで、いつも私の旅支度は大仕事となってしまいます。皆さんは、いかがですか? |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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