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Captain 17 |
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文=川村 求(日本航空機長)
Text by Motomu Kawamura
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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「じゃあ、5時にロビー集合」
滞在先のホテルに到着し、チェックインを終えると、私は若いパイロットに声をかけて夕食に誘います。仕事がら、日本各地で宿泊することの多い私たちですが、自ずといつも足を運んでしまうなじみの店があります。今回は、そうした運航乗務員の滞在先での食事について、話をしてみたいと思います。
普段、パイロットの食事はというと乗務中に済ませることが多く、冷凍食材を温めたクルーミールやお弁当が中心となりがちです。そのため、1日の仕事を終えた後に摂る滞在先の夕食は、大きな楽しみとなっていて、人の温もりが感じられる「お袋の味」に、自然と足が向いてしまいます。お惣菜が大皿に盛られているような店や、炉端を囲む店、名物おかみが目の前で料理を作ってくれる店などで、しかも安くてうまいところに人気が集まるようです。
例えば、福岡では玄界灘の新鮮な海の幸が食べられる店、北海道ではジンギスカンのおいしい店、沖縄では郷土料理の味わえる店が行きつけとなっています。
こうした良い店の情報は仲間同士に伝わるもので、運航乗務員をはじめ、客室乗務員も同じ店になんとなく集まってしまいます。また、他社のパイロットと顔を合わすこともあり、都市ごとに「クルーの集う店」があるともいえます。
私の場合も、これらのなじみの店に足を運ぶわけですが、現在、通常の運航業務に加えて、副操縦士を目指す若い訓練生の指導も行っているため、彼らを誘って出掛けることが多くなります。コックピット内では教官と生徒という関係であり、お互いに緊張感をもって臨んでいるのですが、夕食の席では打ち解けて、彼らから率直な意見を聞けたり、先輩として相談に乗ってあげたりすることができるのです。
思い起こせば、自分自身もかつては先輩に連れられて、滞在先のなじみの店で食事をし、パイロットに必要なさまざまなことを教わりました。そして、今は自分がその立場になっています。
乗務中は注意力と緊張感を持続させるため、夜になっても興奮してなかなか眠れないことがあります。1日の疲れを癒し、翌朝のフライトに向けて気持ちを切り替えるという意味でも、私たちにとって「お袋の味」は良いリフレッシュになっているのです。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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