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コックピット日記
Captain 16
文=高桑久仁昭(日本航空機長)
Text by Kuniaki Takakuwa
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
機長の操縦免許
 「機長なんだし、大型旅客機の操縦免許を持っているんだから、どの旅客機でも操縦できるんだろう。羨ましいねぇ」
 時々、こんな風に言われることがあります。それに対して、
「でも、操縦できるのは1機種だけなんですよ」
 と答えると、皆さんとても驚かれるようです。
 多くの方が持っている車の免許の場合、基本的にどのメーカーの車でも、どの車種でも運転することができます。メーターなどの形状やスイッチの位置は関係なく、自分の好きな車に乗れますし、友人の車を借りて運転することも、全く初めての車で公道を走行することも可能です。
 しかしながら、私たち運航乗務員が持っているライセンスの場合、そうはいきません。お客様を乗せて操縦できるのは、1人1機種に限られているのです。私の場合、定期運送用操縦士と呼ばれる機長資格があるのはボーイング777だけで、その他の機種を操縦することはできません。
 その理由としては、常に確実・正確な操作を求められることが挙げられます。旅客機を飛ばす基本的な操縦方法は、どの機種でもほぼ同じですが、操縦桿を握る度に計器の形やスイッチの位置が違っていては、旅客機を安全に運航できません。何よりも緊急時の操作に支障を来たしてしまいます。1機種のみに専念し、操縦技能を磨いて経験を積むことにより、安全な運航ができるというわけです。
 また、「国内線と国際線のどちらを飛ぶか、自分で選べるのですか?」とも、よく尋ねられますが、まず私たちのライセンスには、国内線か国際線かという区別はありません。また、ボーイング777の操縦資格があっても、運航のためには、各空港ごとに定められた離着陸するための資格も必要となります。ですから、自由に路線を選べるわけではないのです。
 先日の例ですが、まず羽田空港から国内線を3レグ(区間)飛んで大阪に泊まり、翌日、関西国際空港からバリ島のデンパサールを経由して、インドネシアの首都ジャカルタへ飛びました。そして、次の日の夜にジャカルタを発ち、その翌朝に成田国際空港に帰ってきました。
 このように、国内・海外に関係なく飛び回る私たちの操縦免許。皆さんの多くが持っている車の運転免許との違いは、お分かりいただけたでしょうか。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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