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Captain 15 |
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文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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間もなく、梅雨の季節。アジサイが美しく咲く一方で、傘を差して歩く煩わしさや、湿気で蒸し暑いかと思えば、その反対に肌寒い日があったりと、不安定な天気が続きます。皆さんにとっては、いかがでしょうか?
さて、梅雨というと、空港への行き帰りや、旅客機に搭乗される際に、服や荷物が濡れる、傘が邪魔になる、といったあまり良くない印象でしょうが、私たち運航乗務員も、操縦にいつも以上に気をつかわなければなりません。
というのも、雨の日に車を運転すると、雨滴で視界が悪くなったり、ブレーキが効いて止まるまでの距離が長くなったりしますが、旅客機も同じ状況になるのです。
現在の旅客機はコンピューターが発達して、より安全になっているものの、離着陸時の操作にはやはり人間の目と腕が欠かせません。そのため、滑走路や進行方向を見極めるための見通し――窓ガラスに視界を妨げる汚れなどがなく、雨滴が邪魔にならない――が最も重要となるのです。コックピットの前方の窓には、車と同様にワイパーが付いていて、地上走行や離着陸の際に使用します。また、汚れを落とすためのウォッシャー液も装備されていますし、ガラス内に透明な電導性の膜が埋め込まれていて、氷を溶かしたり曇り止めの機能を果たします。さらには、整備士が窓に付着した虫などの汚れを清掃してくれています。これらによって、良好な視界が保たれているのです。
この他、滑走路上での停止距離が短くなるように、着陸の際の進入速度を遅くしたり、接地、ブレーキ操作などを工夫したり、いつも以上に細心の注意を払って運航しています。
こうした離着陸時などでの操作とは別に、注意が必要なのは前線です。梅雨の時季、日本の南岸、東京―大阪―鹿児島といった航空路の動脈上に、いわゆる梅雨前線が横たわります。
この前線付近というのは、冷たい空気(寒気団)と温かい空気(暖気団)という異なる二つの気団がぶつかっている状態のため、積乱雲、風の急激な変化などによる乱気流が発生しやすく、揺れを伴います。ですから、前線付近を飛行する際には、そうした悪天候を予想し、対処しながら安全飛行はもちろんのこと、できる限り揺れが少ないように飛行しているのです。
梅雨の季節――。でも、気分はじっとりとせず、健康に留意して、明るく乗り切りましょう。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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