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コックピット日記
Captain 14
文=指方浩之(日本航空機長)
Text by Hiroyuki Sashikata
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
乗客ゼロのフライト
 「カーゴ」という言葉に聞き覚えはありますか。これは貨物便を意味するもので、旅客機はお客様を乗せるだけでなく、毎日たくさんの荷物も運んでいます。
 荷物は、皆さんがご利用される旅客便の貨物室に入れても運びますが、大きな物や大量の荷物はフレイターと呼ばれる貨物専用機を使用します。空港で、客席用の窓が付いていないジャンボジェット機を見かけたことがあると思いますが、日本航空では貨物専用機としてボーイング747などを北米やヨーロッパ、アジア各地に運航しており、旅客便の少ない早朝や夜間に離発着を行っています。
 皆さんには馴染みの薄いフレイターだと思いますが、この操縦も運航乗務員の仕事です。かつて私もセカンド・オフィサー(航空機関士)として、搭乗していました。
 通常、ボーイング747フレイターに搭乗するのは機長、副操縦士、航空機関士の3人だけです。競走馬を輸送する際、厩務員の方が同乗されることなどがあるため、数名分の座席も用意されてはいますが、コックピットを出るとトイレとギャレー(調理室)があるぐらいで、内装の施されていない殺風景な機内は、荷物で埋め尽くされています。
 また、乗客がいないので、機内アナウンスやベルト着用サインの必要はありません。旅客便なら、食事をされている際に機内が揺れないよう飛行ルートを選んだりしますが、フレイターの場合はむしろ到着時間や燃費などを優先します。こうしたことから、コックピット内の雰囲気も旅客便とはずいぶん違うように感じられます。
 この他、北米やヨーロッパ方面を結ぶフレイターは、途中で給油のために、旅客便は使用しないアラスカ州のアンカレジへ立ち寄ることが多いのも特徴です。
 食事はどうするのでしょうか。機長と副操縦士は座席から離れづらいため、だいたい航空機関士が準備します。しかも、電子レンジが備え付けられていない場合は、料理を温めるために、おしぼり用のオーブンを使うなどの工夫をします。
 たくさんのお客様と客室乗務員が搭乗し、機内放送や食事のサービスが行われる旅客便。その一方で、搭乗するのは運航乗務員ばかりのフレイター。皆さんが海外へ向けて出国したり、旅行から帰国される傍らで、今日も荷物を積み込み、運航乗務員は世界の各都市へ出発していきます。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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