「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain120 雨と航空機文=川添 剛(ボーイング737-800機長)
5月から7月にかけて、日本列島には東西数千kmに亘って梅雨前線が停滞します。御存知のように「梅雨」とは、東アジア特有の気象現象で、毎年訪れる曇りや雨の多い期間を指します。日本においてはオホーツク海に存在する冷たく湿った「オホーツク海気団」と、北太平洋西部に存在する高温・多湿の「小笠原気団(太平洋高気圧)」とがせめぎ合い、両者の湿度差によって停滞前線が形成され、数カ月の間に少しずつ北上していきます。
航空機の運航に関して、「気象」を学ぶことは極めて重要です。パイロットを目指す人間は「安全」「法規」「航法」「力学」「通信」など多くのことを座学で学びます。なかでも「気象」は風や雷など予測が立てにくい自然が相手。そのメカニズムを基礎から頭に叩き込み、変化する環境下においても安全を第一に柔軟に対応できるよう準備しています。私がかつて学んだ航空大学校では、上級生のフライトの天気図を一年生が描く、というのが習わしになっていました。気象衛星やコンピューターが発達し、最新の画像をすぐ見ることができる現在でも、この体験は私の職務の原点のひとつです。
さて、お客さまからこの時期、「ジェットエンジンにたくさんの雨が入っても大丈夫なのでしょうか」という質問をいただくことがあります。旅客機のジェットエンジンはたくさんの羽を回転させて空気を圧縮し、その空気を燃焼室に送って燃料を燃やしています。空気は圧縮すると発熱する性質がありますので、燃焼室に入る前の段階で、雨はほとんど蒸発しています。
また、エンジン製作時には、たくさんの水をジェットエンジンに対し放水した状態での燃焼実験が行われ、正常に燃焼できることが確認されたエンジンのみ生産されていますので、ご心配は無用です。
現在、JALボーイング737-800で使用しているエンジンは、CFMインターナショナル社が製造するCFM56.7というエンジンで統一されています。ファンの直径は61インチ、一世代前の737 -400に使用されているCFM56.3型エンジンよりも、高推力、高効率、低維持費を実現しています。地面とのクリアランス(間隔)を確保するためにエンジンの正面、空気取り入れ口の底が平らになっているのが特徴です。
空港にお越しの際は、ぜひご覧になってください。
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

