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コックピット日記
Captain 12
文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
パイロットになるには……
 空港に行くと、ガラス窓に額をくっつけて旅客機をじっと眺めている子供の姿を見かけたりしませんか。「大人になったら、ボク、パイロットになるんだ」と、将来の夢を語る子供を見て、大変うれしく思うことがあります。
 現在、自分はこうして旅客機の操縦桿を握っているわけですが、周囲の方々は「きっと小さいころから旅客機が大好きで、物理や数学が得意。しかも知識が豊富な専門家なのだろう」といったイメージをもたれているように感じます。しかし、実際のパイロットはというと、パイロットを夢見ていた「飛行機少年」のような人は少数派で、入社前から旅客機の専門知識に詳しいといった人も少ないようです。そういう自分も、小さいころ電車の運転手に憧れたことがある程度で、特に旅客機に詳しいわけでもなく、訓練を受けるまで何も知識はありませんでした。
 確かに、旅客機の操縦には専門的な知識が必要ですし、高度な技術も求められます。そのため、入社してから猛勉強することになりましたし、日々、知識を深め、技術を磨くことは欠かせません。こうした知識や技術はもちろん大切な要素ですが、旅客機の運航に全責任をもつ機長という立場には、それ以外に別の重要な能力も求められるように思えます。
 その一つとして、人と人とをつなぐ「管理能力」があります。旅客機の運航には、地上スタッフや整備士、客室乗務員など多くの部署、大勢の人間が携わっています。それぞれが専門知識と専門技術をもっていて、エキスパートばかりですが、みんなが仕事をしやすい環境を整え、チームワークを発揮できなければ、お客様に満足していただける運航はできません。そういう意味で、責任者である機長には、周囲の意見を聞き、的確な指示を出して、目的に向かってスタッフをまとめ上げていく能力がより重要となってくるのです。
 この一年、自分は旅客機の操縦に加えて、航空ダイヤの作成や機材の編成、中長期的な事業計画といった、まったく異なる分野の仕事に参加しています。事業計画の中に、現場を預かる機長の声も参考にしようというものですが、仕事を通じて、自分もお客様の声や他部署の意見を聞き、人と人との架け橋となる役割、管理能力の大切さを実感しています。
 人とどのように接し、うまく付き合うのか――、空の上でも、地上でも共通の課題です。
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日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

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