「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain114 直通エレベーター文=崎濱重男(ボーイング787機長)
世界に先駆けて大空を飛び、国際線で活躍している最新鋭のボーイング787。
搭乗されたお客さまからは、「機内が広くてきれい」「加湿機能があるので、乾燥が和らぐ」「下降時に、耳があまりツーンとならない」などの声が聞こえてきており、おおむね好評をいただいています。
機内の気圧( 与よ圧あつ)に関しては、上空でも標高1,800メートルほどにいるのと同じ環境と、これまでの標高2,400メートルほどに比べて空気が濃く(酸素量が多く)なっており、長旅の疲れが軽減されることにもつながっています。
コックピットにいると、操縦に集中していたり、機内の環境に慣れていることもあって、あまり気圧の低さについて感じることはありません。しかし、下降の際、従来機ですと置いてあるペットボトルが空気圧によって、よく変形したのに対し、787ではほとんど変わらないので、機内の気圧が高めになっていることを実感します。
そんな機内の環境が改善されている787ですが、飛行ルートにおいても、従来機より優れている点があります。
787に搭載してあるジェットエンジンはものすごく推進力があり、離陸後、巡航飛行高度まで一気に上昇することができます。長距離フライトの場合、離陸する旅客機はたくさんの燃料を積んで重くなっているため、従来機ですとエンジン性能との兼ね合いから、飛行高度を数回に分けて上げていき、最終的に雲がほとんどなく、風が安定している、最も飛行効率の良い巡航飛行高度へ到達します。
たとえるなら、ビルの最上階へ上がるために、エレベーターを何度か乗り換えていくようなものです。
この場合、他の離陸機も同じように高度を上げながら上昇していくため、エレベーター内や乗り換えとなる階層は混雑し、これを避けるために、管制官から出発時間を待たされることもあります。
一方、787はお客さまや貨物、燃料で機体が重い状況(最大離陸重量※)でも、最上階まで一気に上がることができ、途中で乗り換えの必要がありません。いわば、専用の直通エレベーターを利用できるようなもので、混雑がほとんどないといえます。
そのため、高度による理由で出発時間を待たされることも少なく、他機よりもいち早く巡航飛行高度に到達できるので、揺れが少ない、効率の良い飛行ルートを取りやすくもなるのです。
空の旅をより快適に。787は、機内の環境と運航ルートの両面で、皆さんの旅を応援しています。
※標準大気の場合、ボーイング787では最大離陸重量でも高度37,000フィート(約11,300メートル)まで一気に上昇することができます。
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

