「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain112 新しい着陸方式文=川添 剛(ボーイング737-800機長)
針の穴を通すコントロール──。
野球で、ねらい通りの位置にほとんど誤差もなく、ボールを投げることができる、制球力のいいピッチャーによく使われるたとえです。
空の世界でも航空機の数が多くなり、例えば、羽田空港へ着陸しようとする旅客機は、管制官の誘導に従い、決められたルートを通るようになり、それこそ正確なコントロールが求められるようになりました。
旅客機の高度や位置、進入角度など、コントロールに必要な操縦技術を私たちパイロットは修得していますが、空の上では風などの影響を受けますので、パイロットの技能だけでは正確なコントロールが難しい状況も起こりえます。現在の旅客機はコンピューター化が進んでおり、衛星航法システムなどを使って自機の位置を把握し、正確なルートに沿って飛行するよう航路を監視し、機体を微調整しながら飛行しています。
また、滑走路へ着陸する際には、視程が悪い状況でも着陸ができるILS(計器着陸装置)※など、これまでも正確なコントロールを用いた進入方式がありましたが、さらに今年から新方式「RNP -AR」※※の運用が始まり、一部の空港(滑走路)で運用されています。
この新方式の利点を簡単に説明すると、最終進入経路を曲線にできるという点です。
ILSでは、レーダーによる監視のもと、管制官の誘導に従って空港へ近づいたり、所定の経路を飛行した後、滑走路の端から発信されている誘導電波をとらえて、自機の位置を確認しながら着陸していきます。
この場合、誘導電波を受信できるのは、滑走路のほぼ延長線上に限られるため、最終進入経路は長い直線になります。
一方、新方式では、設定された航路から0.3マイル(約500メートル)以上外れると、コンピューターが警告するという高精度の航法により、空港へ近づく際、管制官による誘導を必要としません。また、最終進入経路も長い直線が必要なくなり、曲線を描いて、滑走路へ進入することができます。
新たな曲線の進入経路は、従来の経路に比べて着陸時の飛行ルートが短くなり、時間の短縮と燃料の節約につながります。羽田空港の場合、東京湾のほぼ上空のみを飛行して着陸できるので、騒音の減少も期待できます。
パイロットの資格や管制官の許可などの条件はありますが、JALグループの国内線では、737 -800型機において、函館空港、羽田空港、高知空港(一部のアプローチ)、北九州空港(両アプローチ)で、新方式での着陸が行われています。
※ Instrument Landing System
※※Required Navigation Performance-Authorization Required
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

