「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain111 ウイングチップ文=今森進介(日本航空機長)
旅客機を利用されるとき、皆さんは機内のどこで国際線と国内線の違いを感じますか?
「座席の種類や配置が違うし、国際線の場合は各席にモニターが付いている」という意見が多いのではないかと思います。旅慣れた方なら、「ギャレー(調理室)の場所や広さが違う」といった指摘があるかもしれません。
では、私たちパイロットの場合はどうかというと、国際線仕様でも国内線仕様でもコックピットは同じなので、見た目の違いはほとんどありません。違いがあるのは、エンジン計器の画面ぐらいです。
JALグループが運航しているボーイング777では、国際線仕様と国内線仕様で搭載しているエンジンが異なり、前者はゼネラル・エレクトリック(GE)社製、後者はプラット・アンド・ホイットニー(P/W)社製となっています。この二社では、左右のエンジンの出力を一致させる方法が異なっており、簡単にいうと、GEはファンブレードの回転数、P/Wはエンジンの入り口と出口の空気の圧力比で合わせています。
P/Wのエンジンを搭載した国内線仕様の旅客機では、ファンブレードの回転数を示す数値「N1」に加え、空気の圧力比を示す数値「EイーパーPR」が表示されるので、それにより私たちは、機種の違いを認識しています。
また、外部点検のときには、主翼で違いが分かります。機体の長い777 −300の場合、国際線仕様の主翼の先端部には、尖った形状をした「レイクド・ウィングチップ」が装着されており、国内線仕様に比べて、全幅が3.9メートル長くなっています。
これは、主翼の先端部で発生する空気の渦を少なくし、空気抵抗を減らすことによって飛行効率を高めるもので、主翼の先端部が上方へ大きく延びているボーイング737−800のウイングレットと同じような働きをします。また、尖った主翼の形状は、最新鋭のボーイング787にも取り入れられており、先端部が反り上がり、まるで鳥が羽ばたいているようにも見えます。
そんなレイクド・ウィングチップを眺めていると、私は自然の尊さを感じずにはいられません。人間が科学によって飛行機を改良してきた結果、たどり着いたのは、すでに自然界に存在する鳥の翼の形状であり、それらを進化によって獲得してきた生き物の素晴らしさに、改めて感心させられます。
皆さんも機会がありましたら、国際線仕様の777−300に注目してみてください。
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

