「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain110 形を変える主翼文=崎濱重男(日本航空機長)
皆さんは、ボーイング787にもう搭乗されましたか。
JALグループでは、787が運航されるのは国際線のみで、路線数もまだ少ないので、なかなか乗る機会がないかと思いますが、私たちパイロットも訓練期間を経て、本格的に操縦桿を握る仕事が始まりました。
これまでの旅客機にはない機能や装備で注目されている最新鋭機ですが、コックピットはボーイング777とほぼ同じレイアウトになっており、777から移行してきたパイロットからすると、「すごく変わった」といった感じはありません。むしろ、モニター画面が大きくなったり、透明なスクリーンを通して前方の窓に速度や高度などの情報を映し出すヘッド・アップ・ディスプレイが装備されるなど、「とても便利に、操縦しやすくなった」という印象で、操縦感覚は777とほぼ同じです。
パイロットの立場から、従来の旅客機と大きく違う点を挙げるとすれば、コックピットから主翼の先端が見えることでしょうか。
よくお客さまから、「飛んでいるとき、主翼って、けっこうしなるんですね」と聞かれたりしますが、そうした様子をコックピットから見ることは、777などではできませんでした。しかし、787は全長に比べて主翼がとても長いため、コックピットの窓からも眺められます。巡航中には、特徴でもあるやや反り上がった主翼が、ゆっくりと上下にしなっているのが分かります。
主翼についてもう一つ話すと、787には「みずから考えて飛ぶ旅客機」と呼ばれる大きな特徴があります。それは状況に応じて自動的にキャンバー(翼の湾曲)を変え、最も効率の良い主翼の形状になることです。
離着陸時、旅客機では低速でも揚力が大きくなるよう、主翼からフラップ(高揚力装置)と呼ばれる板などが出てきて、翼が大きくなるのをご存じかと思います。速度が上がると、大きな翼では得られる揚力より、空気抵抗の方が大きくなるため、従来機ではフラップを収納するだけだったのですが、787では飛行速度や機体重量、飛行姿勢などをコンピューターが計算し、もっとも飛行効率が良くなるように、主翼にあるフラップなどの角度を微調整し、状況に応じて翼の形を変えています。
この機能によって燃費が向上し、787は遠くへ飛べば飛ぶほどその性能を発揮することになります。
787に搭乗される機会がある際は、飛行中の主翼にも注目してみてください。
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

