「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain109 五色の灯り文=中村貴幸(日本航空機長)
夕方になると、空港に点つき始めるたくさんの灯り。滑走路や誘導路には、中心線や両端、停止位置などを示す航空灯火があり、夜間の離発着、雨や霧などで視程の悪いときなどは、そうした灯りによって、私たちパイロットは運航に必要な情報を得ています。
皆さんも、空港の展望デッキからそれらの灯りをご覧になったことがあるでしょうし、窓側の席に座られていたら、離陸の直前、滑走路上にたくさんの灯りがあり、まぶしく感じられた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こうした空港の灯りですが、滑走路や誘導路で使われる灯りの色は何種類あると思いますか?「いろいろな情報を伝えるために、それこそ、たくさんの色が使われているんでしょう」という声が聞こえてきそうですが、実は「赤」「白」「黄」「緑」「青」のわずか五種類しかありません。
具体的にいうと、誘導路のセンターを示すのは「緑」の灯りで、両端は「青」の灯りです。滑走路の中心線は距離によって変わり、離着陸する場合、滑走路の終端から300メートルまでは「赤」、それに続く600メートルは「赤」と「白」の交互、900メートル以降は「白」となっています。また、停止線や滑走路の末端は「赤」、滑走路へ進入する手前にある警戒灯は「黄」の灯りで示されます。
空の世界では、光源から離れた場所からでも色を識別しやすいよう、見分が容易な五種類の灯りを組み合わせて示すのが国際ルールとなっています。
こうした航空灯火には、これまで強い光を出せるハロゲンランプが光源として使われることが多く、フィルターを通して色を変え、五種類の灯りを作っていました。一方で、最近は消費電力がおよそ三分の一と少なく、寿命は50〜100倍、さらに小型化が可能なLED(発光ダイオード)を使った灯りも登場しています。LEDの場合、光そのものに色があり、光量も素早く調整できます。
現在、羽田空港でD滑走路(海上滑走路)の誘導路には、「緑」と「青」のLEDが使われており、コックピットから眺めると、他の誘導路の灯りに比べて、はっきりと見える感じがします。関西国際空港や成田国際空港の誘導路でもLEDが導入されており、さまざまな検証を経て、いずれは滑走路で使用される「赤」や「白」などの灯りもLEDに替わっていくのではないでしょうか。
空港の灯りにも、環境対策などが求められるこの頃です。
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

