「コックピット日記」は4人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
Captain101 旅客機のタイヤ文=中村貴幸(日本航空機長)
着陸とともに、タイヤから白い煙を上げ、滑走路へと降り立つ旅客機。多くの空港では、屋上などに展望台が設けられており、旅客機が離着陸を行う様子を眺めることができます。
そうした中、「あれだけの大きな機体を支える旅客機のタイヤは、どうなっているんだろう?」などと、疑問をもたれる方も少なくないでしょう。
そこで今回は、タイヤについて、話をしてみたいと思います。
自動車などの場合、タイヤは常に路面に接しており、走行性や耐久性などが重要となりますが、旅客機の場合、タイヤの性能が強く求められるのは離着陸のわずかな時間だけです。飛行しているときは収納してしまうので、コンパクトであることが求められ、その分、空気圧がとても高く設定されています。具体的には、普通自動車のタイヤが一平方センチあたり2キロほどの空気圧に対し、MD-90のタイヤは約13.9キロと、7倍近い圧力差があります。加えて、着陸時の激しい衝撃に耐えられるよう、タイヤが何層構造相当になっているか、強度を示すプライレーティングも、MD-90の場合は26と、普通自動車の4〜8に比べ、かなり丈夫になっています。
また、離着陸の際にはトレッド(路面と接するゴムの部分)が摩耗や損傷するので、200回ほど着陸を行うと、タイヤは交換されます。取り外されたタイヤは、表面のゴムを取り除き、新しいゴムを張り直すことで再生されます。これを「リトレッド」もしくは「リキャップ」と呼び、MD-90の場合、6回ほどタイヤを再利用しています。
さらに、離着陸時の摩擦熱で火災が発生しないよう、タイヤには酸素が含まれる空気ではなく、100%窒素が入れられています。
このような特徴をもつ旅客機のタイヤですが、機体が大きく、重量も大きくなる分、着陸時にはブレーキにも大きな負担がかかります。タイヤのホイール内部には耐熱性に優れたカーボン製のディスクブレーキが搭載されていますが、気温が高くなる夏本番のこの時期は、着陸で熱くなったディスクブレーキ内部の温度が上がってしまうと、なかなか下がりにくくなってしまいます。そうした際には、駐機中、整備スタッフが冷却用のファンを取り付け、タイヤを冷やす光景も見られます。
夏休みの旅行や帰省の際、空港で搭乗を待っている間、タイヤの近くで作業しているスタッフを見かけたら、ぜひ子供たちへ、旅客機のタイヤについて教えてあげてください。
日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)

