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Captain 9 |
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文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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季節の移り変わりは早いもので、もう12月。クリスマスや大晦日と、一年の締めくくりが近づいてきました。
皆さんは、この一年どのようにお過ごしでいらっしゃいましたか? 日本に暮らしていると、四季それぞれで咲く花や気候の変化などで、季節を感じる機会も多いと思いますが、例えば常夏のハワイ、日本とは季節が正反対のシドニー、熱帯のシンガポールなど、私たちのように一年中、海外を飛び回っていると、季節感がどうしても薄くなってしまいます。しかし、本格的な冬へと向かうこの時季、時速300キロにも達するジェット気流(偏西風)が日本上空を横断するようになり、その影響や雪雲の中の飛行、風または気温の変化、さらには上空から見える景色の変化などにより、私たちは「いよいよ冬が来たな」と実感します。これは、コックピットならではの季節感かもしれません。
さて、冬といえば「滑走路が凍結するとどうするの?」「旅客機もスタッドレスタイヤを履くの?」といった質問をよく受けます。
クルマの場合、凍結した路面でカーブを曲がったり、上り坂や下り坂を走ったりするため、専用のタイヤが必要となるのでしょう。しかし、旅客機の場合、とくに冬用のタイヤというのはなく、一年中、同じタイヤを履いています。皆さんが運転されるクルマのタイヤと違って、排水のために縦に数本溝の入ったシンプルなものです。
降雪などにより路面が凍結すると、雪質・降雪量を調べ、路面摩擦係数を測定し、横風制限値などのデータを調整することにより、安全に離着陸できるようにさまざまな工夫を施します。また、滑走路から誘導路に出るときや、地上走行時も、安全に走行できるよう十分に速度を落とします。
新千歳空港などの寒い地域にある空港では、路面が凍結、もしくは降雪などにより視界が悪くなると、各旅客機が滑走路を専有する時間が長くなり、「管制間隔」と呼ばれる次の旅客機が滑走路に進入するまでの間隔が、通常より長く取られます。よく利用される方なら、冬場の方が、同じ空港でも離着陸にかかる時間が、地上走行を含めて長く感じられることが多いのではないでしょうか。
冬場は空気が澄んでおり、景色もとてもきれいに見える時季です。皆さんも機会がありましたら、景色をお楽しみいただくとともに、上空ならではの「季節」を発見してみてはいかがでしょうか。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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