JAL | JAPAN AIRLINES

コックピット日記
Captain 8
文=指方浩之(日本航空機長)
Text by Hiroyuki Sashikata
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo
“早食い”の習慣
 離陸後しばらくすると、ほのかに漂ってくる機内食の匂い。国際線では、食事のサービスを楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。
 皆さんが座席で食事をされるように、運航乗務員もコックピット内で食事を取っています。そこで今回は、あまり知られることのない、私たちの食事風景をご紹介しましょう。
 まず、どんなメニューを食べているのかというと、皆さんが取られているものとは少し違っています。食事を楽しんでいただけるように、見た目や味に工夫を凝らしている皆さんのメニューとは異なり、私たちの食事はシンプルなものです。短時間で食べることができ、エネルギー源となることに重点が置かれているようです。
 また、食事によるトラブルを避けるために、機長と副操縦士は別々のメニューを食べるように規則で決められています。たいていの場合、和食と洋食の2種類のメニューが用意され、どちらを食べるか2人で相談することもあれば、“くじ引き”で決めることもあります。その上で、操縦に支障がないよう、それぞれ時間をずらして食事を取ります。
 国際線はフライト時間が長いため、食事を取る時間に余裕がありますが、例えば羽田―伊丹線のような1時間程度の国内線でも、私たちの場合、時間帯によっては食事を取らなくてはなりません。この場合、お弁当が用意され、急いで食べることになります。
 さらに、食べ方についても工夫が必要です。皆さんの座席には、食事を取るためのテーブルが備え付けられていますが、操縦席にはそうしたテーブルがありません。そのため、私たちの食事はトレイではなく、深さ5センチほどの箱に用意され、これを膝の上に乗せたまま食べます。
 このように私たちの食事は、乗務に必要な健康と集中力を維持するための栄養を摂取するもので、ゆっくりと味わったり楽しんだりする雰囲気はありません。そこまでして、狭いコックピット内で食事を取ることもないだろうと、思われるかもしれませんが、飛行中に時間を作り、素早く食事を取ることは、運航乗務員として大切な仕事の一つなのです。
 仕事のためとはいえ、こうした食事の仕方をしていると、普段から早食いの習慣が身に付いてしまいます。
images
日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載
 

Copyright © Japan Airlines. All rights reserved.