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Captain 6 |
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文=工藤英樹(日本航空機長)
Text by Hideki Kudo
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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皆さんは今、どのあたりを飛んでいらっしゃいますか?
ご旅行中、機内のスクリーンや個人用モニターで、旅客機の現在位置を示したフライト・インフォメーションの画面をよくご覧になると思います。また、座席のシートポケットにある機内誌で、飛行ルートを紹介した地図を見ることも多いでしょう。そんなとき、「本に載っている飛行ルートと、画面に映っているルートが違う」、あるいは「前回と違うところを飛んでいる」と疑問をもたれたことはありませんか。今回は、この違いについてご説明しましょう。
まず、地図に描かれている飛行ルートは、毎回ほぼ同じルートを飛行する欧州線などを除いて、出発地から目的地までの最短距離(大圏コース)を表しています。簡単に言うと、地球儀の上に真っ直ぐ線を引いたものと思ってください。これに対して実際の飛行ルートは、気象予報などを考慮して、もっとも効率がよく飛行時間の短いルートを選択しています。これを「ミニマム・タイム・トラック(MTT)」と呼びます。
例えば、成田空港とシドニーを結ぶルートは、地図を見ると一つの飛行ルートで示されていますが、実際には2〜3本のルートが設定されていて、それぞれのルートは場所によって約300〜400キロも離れています。そして、飛行当日に最適なルートを選択するため、地図を見てグアム島の真上を通過すると期待していたのに、全然違ったということもありえるのです。
さて、実際の飛行ルートとなるMTTですが、日本を離発着するフライトはジェット気流(偏西風)によって大きく影響を受けます。とくに冬場は、時速約300キロにもなるジェット気流が日本上空付近を流れるため、その影響は避けられません。西行きと東行きでは、飛行時間が大きく変わるのもこのためです。
とくに、太平洋上空を飛行するホノルル線やアメリカ西海岸線は、ジェット気流の影響を受けやすいため、MTTとなるルートを毎日設定し直すほどです。以前乗ったときはアラスカ付近を通ったけれど、今回はかなり南の太平洋上を飛んでいるといったようなルートの違いも起こりえます。
地図上では、1本の真っ直ぐな高速道路のように描かれる飛行ルートですが、実際には複雑に入り組んだルートの中から、もっとも効率的で、安全なルートを探して、飛行しているのです。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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