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Captain 5 |
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文=指方浩之(日本航空機長)
Text by Hiroyuki Sashikata
イラスト=國友主税
Illustration by Chikara Kunitomo |
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もうすぐ夏休み。避暑地に出掛ける方、海外旅行をされる方、ご家族で故郷へ帰省する方など、いろいろとご予定を立てていらっしゃることと思います。この時期はご旅行やビジネスなどで、旅客機をご利用になる機会がぐっと増えるのではないでしょうか。
さて、読者の方からこんな質問をいただきました。
「夜間のフライトについてですが、離発着の際に、機内の明かりが落とされて暗くなります。旅客機というのは、離陸や着陸をするのに、かなりの電力を必要とするのでしょうか」(神奈川県・綿貫洋一さん)
このような経験をされた方は多いと思います。離陸時には、旅客機が安定飛行できる高度に達するまで、また着陸時には、最終の着陸態勢に入ってから旅客機が停止するまで、機内を暗くいたします。
しかしながら、これは必要な電力を確保するといった意味ではありません。機内を明るくしたままでも旅客機の機能には問題なく、安全に離着陸できます。では、なぜ暗くするのかというと、「人間の目」に理由があります。
例えば車を運転していて、急に真っ暗なトンネルに入ると、目が慣れずしばらく見えにくい状態が続きます。同様に、眩しい場所から暗い建物に入ったときも、その暗さに慣れるのに時間がかかります。これらは「暗順応」と呼ばれるもので、人間の目の特徴です。
夜間のフライトで旅客機にトラブルが生じ、緊急脱出をしなくてはならないとなった場合、こうした暗順応に時間がかかっては大変です。そのため離着陸の際には、あらかじめ機内を暗くし、周囲の暗さに目を慣らしていただくのです。ちなみに我々がいるコックピットでは、飛行中も夜間は常に暗い状態にしています。
お客様には不便をお掛けすることになりますが、機内が暗い分、窓から街の夜景がよく見えます。とくに離着陸時は高度が低く、運が良ければ夏の風物詩ともいえる打ち上げ花火に遭遇します。
羽田空港の周辺でしたら、毎日8時30分になると東京ディズニーランド&ディズニーシーで花火が上がります。伊丹空港なら、毎年8月に行われる富田林市の花火大会がきれいに見えるようです。この他、夏休みシーズンは日本各地で打ち上げ花火が行われ、楽しみも増えます。
夏のひととき。夜間のフライトで窓際の席にお座りになられた際には、ぜひ打ち上げ花火を探してみてはいかがでしょうか。 |
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| 日本航空月刊誌『Agora』2003年より連載 |
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