コックピット日記

「コックピット日記」は5人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。
2018年6月14日号(Captain 171 737の得意技)をもってホームページでの連載を終了いたしました。

Captain 171 737の得意技文=川島 匠(ボーイング737 機長)


読者の皆さま、こんにちは。
これからの季節、お盆休みや夏休みのご旅行を計画されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。私が乗務しているボーイング737ー800は、国内線の主力機として全国30都市以上に就航しています。今回は、国内地方路線で活躍する737ー800でしか行うことができない、空港へ着陸するための進入方式「RNP ARアプローチ」についてお話しいたします。
写真
 各空港への進入方式には、いくつか種類がありますが、主流は「ILS(計器着陸装置)アプローチ」という方法です。これは、レーダーによる監視のもと、管制官の誘導に従って所定の経路を飛行した後、滑走路の末端から発信されている電波をとらえて、自機の位置を確認しながら進入していきます。電波を受信できるのは、滑走路のほぼ延長線上に限られるため、最終進入経路は長い直線になります。

 一方「RNP ARアプローチ」は、電波の誘導ではなく衛星位置情報などを使用して、設定された経路上を正確に飛行しているかを、航空機に搭載された計器類で監視しながら進入していきます。万が一、経路から外れた場合は、自機の計器上に警告が発せられるため、管制官の誘導を必要としません。

  そのため、直線の電波にとらわれることなく、曲線を描いて滑走路へ進入できることが最大の特徴です。飛行ルートが短くなり、時間を短縮し燃料を節約することができます。例えば、ILSでは不可能だった、山間などを旋回しながら飛行する経路も設定できます。青森空港への進入では、風向きや天候にもよりますが、このアプローチをしていると、四季折々の表情豊かな八甲田山の山景を、間近で体感していただけるかもしれません。

 このように「RNP ARアプローチ」は、いくつもの条件を満たさなければならないため、国からの特別な許可が必要です。現在、JALグループでは737ー800のみで行うことができます。私たちパイロットは、それぞれの航空機の特性を最大限に活用しながら、今日も皆さまを安全に目的地までお送りいたします。

※RNP AR = Required Navigation Performance - Authorization Required
※ILS = Instrument Landing System

日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)