コックピット日記

「コックピット日記」は5人の機長が毎月交替で、パイロットに関する話や日常の乗務で出合ったこと、ちょっとした役立つ情報などを、読者の皆さまにお届けするエッセイです。

Captain 155 滑走路の標識文=川添 剛(E170 機長)

 読者の皆さまこんにちは。 ご搭乗の際、機内モニターや窓から、滑走路のマークをご覧になったことがあるかと思います。実は、空港によって、滑走路の標識の表し方が異なっているのをご存じでしょうか。標識の色も、基本的には白色ですが、積雪の多い地域では、雪とのコントラストを考慮して黄色で記されています。今回は、着陸時に見える滑走路の標識についてお話しします。
 空港が近づき、滑走路の端に最初に確認できるのが、山の形が連続した黄色の標識です。この部分を過走帯※といい、この先に滑走路があることを意味しています。標識はもう1種類あり、接続する滑走路と過走帯が同等の強度を有する場合は、白色の矢印で表示されています。国内ではごく一部で、那覇空港の南風用の滑走路などで見ることができます。
写真
 過走帯を通過した後、滑走路に入ると、横断歩道のようなマークが見えてきます。滑走路末端標識です。滑走路の幅によって本数が決められており、幅45mの場合は12本、幅60mの場合は16本です。国内では、羽田空港など約3割の滑走路が16本で記されています。
 そのすぐ先には、数字で書かれている指示標識が確認できます。これは、滑走路の向きを表しています。方位を36等分し、北向きを36として時計回りに、東は09、南は18、西は27となります。例えば、02とマークされている滑走路は、北から時計回りに20°の北北東を示しています。

そして着陸間際、2つの大きな四角い形をしたマークが見えてきます。これは、目標点標識といい、着陸時にとても重要な目印です。豆腐の形に似ていることから、パイロットの間では、通称「お豆腐」と呼ばれています。幅10m、長さ60m、バレーボールのコート3面分を超える大きさです。私たちは、このマークを目標にして安全な着陸を目指しています。飛行訓練の当初、「あのお豆腐を目印に着陸しなさい」と、教官からよく言われたものです。
私は、これまでに、国内外100を超える空港に降り立ってきました。滑走路に着陸して駐機場に向かうと、地方空港などでは展望デッキが近く、コックピットに向かって手を振ってくれるお客さまがいます。その姿を見ると、「ただいま」とその土地に帰ってきた気持ちになり、着陸の緊張感が少しずつ和らいでくるのです。そしてまた、次回のフライトに向けて安全運航を誓います。

※過走帯:離着陸時に問題が発生した場合にのみ使用できる、滑走路の両末端に設けられたスペース

日本航空 月刊誌『AGORA』より(2003年から連載中)